第一回ではレインウェアの構造や、防水透湿素材の仕組みについて。第二回はメンブレンについてみていきました。
今回はレインウェアの内側ではなく外側、“撥水”についてみていきます!
そしてよく耳にする『PFCフリー』や、撥水とも深い関わりのあるシームテープについてもみていきます。
この記事を読み終えたらレインウェアの仕組みを”内側から外側まで”理解できるはずです!
目次.
1.そもそも撥水素材とは?
撥水素材:生地に付着した水を球状にして弾く素材。
撥水素材はその特徴からアウトドアの場面で良く使われており、今まで話してきたレインウェアやテント、グローブなどに使われています。
撥水加工では布地の折り目や網目などの隙間は塞がれないので通気性が保たれ、蒸れにくいという特徴があります。(防水加工は生地の隙間を埋めるようにコーティングする為通気性が悪い)
しかし、長時間にわたり雨にさらされたり、水がかかった場所から圧力が加わった場合は撥水加工では防ぐことができず染み出してしまうことがあります。
2.撥水の仕組みとは?
”撥水”と聞くと生地表面に付着した水が玉状になっている、下のような写真を見たことがありませんか?

そもそも水分子には水同士がお互いに引き合う“凝集力”という性質を持っています。
撥水加工の施された繊維では、水滴が付着してもこの水の“凝集力”を小さくすることでき、水自身の持つ表面張力を発揮させ、あのよく見る玉状を作り上げます。
逆に言うと、「生地が濡れる」という状態は水分の表面張力よりも生地表面が水分を引き寄せようとする力が強くなった時(撥水加工が弱くなった時)に水分子が生地表面に吸着され広がる状態なのです。
つまりあの玉状になった水滴は、撥水機能が発揮されている表面で起こる現象なのです。
(ちなみに油に関しては水以上に表面張力が弱く、生地表面が引き寄せる力に負けやすいため、油は生地に染み込みやすいです。)
『それは分かったけれど、なんで水が染み込まないの?』というと、
その仕組みはフッ素系やシリコン系の加工剤を生地表面に被覆させると、生地面に「撥水基(はっすいき)」と呼ばれる分子レベルの細かい突起物が作られるからです。

撥水基は目に見えませんが、細かい産毛のように並んでおり、撥水基が立っている状態であれば水滴は水の持つ表面張力が勝り、玉状になって流れ落ちていきます。
これが撥水機能があると水が玉状になり、生地に染み込まず弾く(流れ落ちる)仕組みとなります。
汚れが付着したり、生地同士が摩擦を受けたりすることによって撥水基が倒れていくと、撥水効果が弱くなっていきます。
3.PFCフリーとは?
次は撥水を取り巻く現状についてみていきます。
最近はニュースでも聞くようになった“PFCフリー”という言葉。いわゆるフッ素を使用していないことを指す言葉で、この『PFCフリー』が現在の撥水加工の中心的話題と言えるでしょう。
現在PFOA・PFOSは環境汚染の原因にもなるため、アメリカやヨーロッパを中心にこれらを使用した商品は販売できなくなっています。日本でも今後はPFCフリー素材への転換が一層進むと考えられます。
そもそもフッ素系加工剤は、表面張力が最も低い「パーフルオロアルキル基(Rf基)」という構造をもった加工物を原料としており、シリコン系加工剤やワックスに比べても高い撥水性と耐久性を発揮します。
しかしフッ素系加工剤に含まれるPFOA(パーフルオロオクタン酸)という物質が地球や人体へ悪い影響があると指摘されるようになり、現在はFOAを含まない炭素数が6個のC6タイプの加工剤(通称C6撥水剤、あるいはPFOAフリー)ならびにそもそもフッ素を使わない非フッ素系加工剤(通称C0撥水剤、あるいはフッ素フリー(PFCフリー))を使用した撥水素材へと世の中は切り替わっています。
C6撥水剤は剤自体の撥水性能が劣る為、生地の撥水性を維持するにはより多くの加工剤を生地に付着させる必要が生じ、結果として風合いが変化したり、風合いを同じにしようとすると撥水性が低下するといった悩ましい問題も生じています。
C0撥水剤については更に難易度が高く、手に付着したわずかな油などが生地に残ってしまったりするという課題があります。
4.PFCフリーの種類は?
上記PFCフリーの流れがあり、各メーカーは従来のフッ素化合物に代わりシリコンやパラフィンなど、環境負荷の低い物質を代替として使い始めています。
非フッ素撥水剤はシリコン系、アクリル系、ワックスなどがあり各社模索しているのが現状です。
その中でも、私はEmpelという撥水加工が面白いなと思っています。

Empel(正式にはEmpel テクノロジー)とはGTT(Green Theme Technologies)社の開発した耐久撥水加工(DWR)で、有害物質や水を一切使用せず、しかし非常に高性能で効果の持続性にも優れた撥水加工です。
つまり、フッ素不使用ながらフッ素より撥水性能が長持ちする”次世代非フッ素系”撥水加工です。
その仕組みは、従来のポリマー(重合体)を水に溶かしたものを生地に浸透させる撥水加工方法ではなく、モノマー(水を含まない自然由来の炭化水素モノマー)を生地に浸透させてからポリマー化することで、ポリマーが非常に安定し、撥水性を高く維持させることができるというものです。
従来の方法では繊維間に浸透はするが繊維自体にはまとわりつきにくく、流れ落ちてしまう部分が大きかったのですが、そうするとポリマーは不安定なまま維持されるので使った溶剤ほどの撥水性が発揮できないだけでなく、摩耗や擦れに弱く、洗濯することでも弱っていってしまうという欠点があります。
一方Empelは繊維自体に撥水加工されるために、ポリマーが非常に安定し、撥水性が高く維持されます。また撥水加工の過程で生地の繊維自体にコーティングが為されるので、摩耗や擦れ、洗濯に対して従来の撥水加工よりも10倍以上の耐久性を備えています。繊維間は隙間が空いたままになるため、加工を施したあとも生地本来が持つ通気性を妨げないというのも特徴です。
5.シームテープとは?
シームテープとは、アウトドアウエアやテント等の生地の継ぎ目から浸水を防ぐために内側からテープを圧着して防水性を高めたもの。
材質はポリウレタンコーティングとPVC(ポリ塩化ビニル)コーティングが主流です。
ポリウレタンコーティングは軽く透湿性があるが加水分解しやすいとされます。一方PVCコーティングは重く透湿性がないが、経年劣化しにくいとされます。
PVCについては熱可塑性樹脂に位置付けられ、安価に製造することができ、耐候性や紫外線など外部の環境での使用に耐え、強度にも優れ、耐水性に優れるという長所をもちます。その反面、耐薬品性(有機溶剤など)や耐熱性に弱い(65℃から85℃で軟化)という短所があります。
ポリウレタンは柔軟性、弾性に優れ、かつ耐摩耗性耐衝撃性対油性に優れている一方で、耐熱性に優れず高温多湿下では樹脂劣化しやすい短所があります。

このシームテープは撥水処理にも関わってくる問題で、ウェアの撥水性能の回復だけを取ればその回復には生地の汚れを落とし、熱を加えることが最適です。しかしシームテープは上記てみてきたように耐熱性に弱いため熱の使用は極力避けるべきです。
つまり”レインウェア”という一枚の衣類の性能を全て発揮させたくても、使用されている素材によって相反する性質があるためすべての性能を発揮させるのが難しいという事です。
具体的には、ゴアテックスは乾燥機の使用OKですが、パーテックスやネオシェルでは乾燥機の使用を避けるよう記載があります。またゴアテックスにしても乾燥機は中温、アイロンは低温、スチームなしを推奨しています。
熱を加えたいけれど低温での使用や乾燥機の使用を避けることが推奨されているのは、上記シームテープの耐熱性に弱いという特徴のためと思われます。またその接着剤の材質にも依ると思われます。(シームグリップはウレタン樹脂60%有機溶剤40%)
さて、レインウェアの仕組みを一通り見てきて、ようやく全体像がみえてきたのではないでしょうか。
次回はこれまでの知識の応用して【グローブ】を取り上げていきたいと思います。
小さなアイテムに詰まった”防水”と”保温”のテクノロジーを見ていきましょう!次回もお楽しみに!
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